2008/2/10

絶海の孤島・ケータ島ツアー

ケータ島・大山山頂からの眺望

3日目。

初日と同じパパヤマリンスポーツ主催の「イルカと海鳥の楽園 秘境  ケータ島1日コース」に参加しました。

ツアーの案内を見たときは漠然と、「風光明媚な島々ののんびり遊覧」というイメージを持っていました。「おもしろいのかなあ」と、半信半疑で参加したわけですが…。
実態は、予想を大きく裏切る、最高にエキサイティングな旅でした。

ケータ島とは、父島のある父島列島からはるか北、聟島列島と呼ばれる一群の島々の中にあります。「ケータ島」というのがどの島を指すかについては諸説あるようです。聟島列島全体を「ケータ列島」と呼ぶこともあるようです。が、このツアーでいうケータ島とは、聟島列島の北端にある「聟島」のことを指しています。
同じ期間に小笠原を訪れていた人に「ケータ島」といっても、頭の上に?マークを浮かべている人もいたくらいなので、「知る人ぞ知る」という感じなのかもしれません。


朝。早めの朝食を終えてホテルのロビーに出ると、ちょうどパパヤのダンディなおじさま・田中さんが迎えにきてくれました。

「服装大丈夫?寒いよ?」
「はい、たぶん…大丈夫です」

パパヤの車で、港近くのパパヤまで移動。そこで、この日のツアー参加者と合流。
初日のツアーとは違って、この日は若者がほとんどでした。ただひとり、おじさんで参加していたのは、昨日宮之浜で会ったウェットスーツのおじさん。
みんなはここでシュノーケル、ウェットスーツ、足ヒレを借りていきます。僕はまったく泳ぐつもりがなかったので、「ギョサン」というサンダルだけを借りました。

最初は、スニーカーを置いてギョサンだけで行こうかと思ったのですが、最終目的地・ケータ島で歩くということだったので、スニーカーも持っていくことに。
結論からいうと、このツアーに参加するときは、スニーカーは絶対に持っていった方がイイと思います。(パパヤの人は「ギョサンでも大丈夫だよ」とおっしゃっていましたが)

理由は2つ。
・ケータ島の山歩きは、道なき道をいくそこそこハードなもの。サンダル履きだと足を痛めてしまうかも。
・行き帰りの高速航行では、体に当たり続ける風によって、どんどん体温を奪われます。素足が露出していると、寒さに拍車がかかるはず。スニーカーで足を覆って、すこしでも風をガードした方がいいです。


さて、アイテムが揃ったら、車で港へ。
この日のツアーは、初日にも乗った大型クルーザー「ミスパパヤ」に加え、小型船(通称「マンボウ」)も出動する2隻立て。この小型船「マンボウ」は、ドルフィンスイム(イルカと一緒に泳ぐこと)とケータ島上陸の際に使うものです。

ツアー参加客は全員、とりあえずいったん「ミスパパヤ」に乗船。
乗船の際、海水で靴の泥を全部落とします。これは、父島の植物の種子をケータ島に持ち込まないための措置。ひとつひとつの島がそれぞれ独自の生態系を持っている小笠原諸島では、別の島に上陸するときはこんなふうに他の島の種子を持ち込まないよう気をつけます。

乗船が完了したら、いよいよ丸一日をかけた長い航海のスタートです。


この日は、前日とは打って変わって、気持ちのいい晴れ空。
小笠原に来てはじめてのいい天気です。

この前日、パパヤの田中さんがうちのホテルの方に「明日のケータは行けそうですよ」と言伝てしてくれていたのですが、その伝言を聞いたときは、「そりゃ普通行けるだろ。わざわざ言伝てなんてしなくても」と思ったものでした。
が、実は、この時期にケータ島ツアーが実施できるのは、かなりラッキーなことだったのだそうです。冬は海が荒れることが多く、ツアー中止になることが多いのだとか。この日は、なんと3カ月ぶりに実現したケータ島ツアーだったのだそうです。本当にラッキーでした。


港を出た船は、二見湾の入り口を西に抜け、進路を北に変えます。
父島の北、兄島、弟島といった島々を右手に眺めながら、船は北上。
このあたりは溶岩が隆起してできた島々で、「枕状溶岩」とよばれる独特な模様の岸壁が見られます。

父島列島を離れると、聟島列島までの間は何もない海が続きます。
はるか彼方には、聟島列島南端、嫁島の島影が。そのはるかな島影に向け、船はひた走ります。


長い航行の末、船は嫁島付近に到着。
ツアーはこの後、嫁島周辺でドルフィンスイムの予定。
シュノーケリングスポット「マグロ穴」を左手に見ながら、嫁島の周囲を反時計回りに回って、イルカを探します。

イルカ探索をしているうちに、たまたま船のすぐ間近に、2頭のザトウクジラ出現。巨大な背中を海面に現し、立て続けにブロー。クジラはこのツアー本来の目的ではありませんが、海に出れば普通にクジラに出会えるのが、小笠原のすごいところです。クジラはみんな興味があるということで、クジラが出現すると船を止めてウォッチングの時間を作ってくれます。なので、ホエールウォッチングのツアーに無理に参加しなくても、クジラを見るチャンスはいくらでもあります。

クジラに続いて、数頭のイルカが出現。ドルフィンスイムをする予定の参加者たちは、船の後尾にあるステップに出て、海に入るタイミングを待ちます。
この、イルカの群れの中に参加者を投入するテクニックは、ちょっとした見物。イルカの群れの前をクルーザーで横切り、通り過ぎるギリギリのタイミングで「はい!入って」と田中さんの合図。見事にイルカの群れの中に投入されていました。さすがです。

イルカたちは、ドルフィンスイム参加者たちの周りにとどまって、いっしょに泳いでくれているようでした。逃げようと思えば、イルカの泳力なら簡単に逃げられるはずですが、イルカの方も慣れたもので、人間たちと遊んでくれているようです。

ドルフィンスイムのために海に入った参加者は、この日の参加者の半分くらい。彼らは海に入った後、ずっと並走してきていた小型船「マンボウ」に拾われ、しばらく2隻に別れて行動しました。
大型クルーザー「ミスパパヤ」に残った僕らは、船の上からイルカ鑑賞です。

2隻はしばらく離れて、それぞれイルカを探していたのですが、そのうちミスパパヤの周りを、ハシナガイルカの大群が取り囲みました。

ハシナガイルカ

ハシナガイルカ

船は、離れたところでドルフィンスイムをしていたマンボウに連絡し、到着を待ちます。

その間、カメラを取り出し、連写・連写・連写。
クジラと違ってそこかしこにいるので、フレームに収めるのも比較的容易。
…といっても、そこは動くイルカのこと。大量に連写して、なんとか比較的よく写ったのが上の2枚。

2度ほど、イルカが錐揉みジャンプを見せたようなのですが、たまたま2回とも背を向けていて、見そびれてしまいました。残念。

ひとしきりイルカを追いかけて遊んでいたのですが、船に残った参加者たちは、みんなだんだん飽きてきてしまいました。それくらいうじゃうじゃとイルカがいたのです。
昨日のウェットスーツのおじさんはなどは、デッキに寝そべり、「周りにイルカがいるのに見ないっていうのも、この上ない贅沢だね」なんて話してました。

マンボウと合流し、ひとしきりドルフィンスイムが行われた後、ふたたび全員ミスパパヤに戻り、いよいよ最終目的地・ケータ島(聟島)へ出発。
聟島列島という一群の島とはいえ、嫁島から聟島までは、けっこうな距離があります。船は再び高速航行開始。

聟島列島は、海に突き出す奇岩の連続。父島付近も溶岩が浸食された断崖絶壁の多い地形ですが、聟島列島はそれをはるかに上回る奇妙な形をした岩だらけ。

この頃になると、船の揺れにやられてダウンしていた人も何人かいたようです。ただ、ぐったり横になろうにも、船は波の上を激しくバウンドするので、気を緩められません。
僕は幸いぜんぜん大丈夫でしたが、ダウンした人にとってはつらい航海だったようです。


ケータ島(聟島)近くに着くと、ツアー参加者全員、上陸のためにミスパパヤからマンボウに乗り移ることに。上陸地点には、大型のミスパパヤでは接岸できません。このため、まずみんなマンボウに移乗し、それで岸まで近づくのです。

上陸地点は、白い砂のまぶしい、美しい砂浜。白砂の向こうには、なにやら鮮やかなオレンジ色の地帯が。(あとで聞いたところによると、なんとかいう植物が変色したものだそう)
空と海の青、砂の白、植物の濃緑色、そしてオレンジ。不思議な色の組み合わせの世界が、そこにありました。
(この景色、写真に撮っておかなかったのが悔やまれます)

船の舳先から砂浜に飛び降り、上陸。
上陸するとまず、砂浜で昼食。(これだけ盛りだくさんの長旅をしてきても、やっとここで昼食タイムなのです)
父島でそれぞれ買ってきた弁当を食べます。僕は、パン屋さん「ホライズン・ドリーム」で買ってきたパンを食べました。ホテルの晩ご飯がとてもゴージャスなので、昼食は控えめに。


昼食が終わると、ケータ島ハイキングに出発です。「大山」という、一番高い地点まで、片道30分程度
歩きます。
「山」といっても、山道というほどのものでもないです。比較的平ら。ただ、道なき道をゆくため、足場はあまりよくないです。冒頭にも書きましたが、スニーカーをはいていった方が無難だと思います。

このケータ島(聟島)は、現在は無人島ですが、かつて人が住んでいたことがあるそうです。上陸した浜(南浜)からすこし歩くと、ここに住んでいたというナントカさんのお墓があります。名前に「亀」の字が入る方で、その名前にちなんで、亀の背中に墓石が乗ったようなデザインのお墓です。
けっこう裕福な暮らしをしていたらしく、生前に自分でお墓を用意していたのだとか。けっこう立派なお墓です。

さらに歩いていくと、道のすぐわきから1羽、そしてまた1羽と、大きな鳥が飛び立ちました。
鷹かなにかのように見えたその鳥は、ガイドの方によると「コノハズク」という鳥ではないか、とのこと。
突然のことだったので、誰も写真に撮ることができず、本当にコノハズクだったのかどうかは定かではありませんが。

やがて一行は、大山の山頂に到着。この山頂には、太平洋戦争時に日本軍の通信基地かなにかがあったらしく、建物の土台らしきものが残っていました。日本兵が飲んだものらしい、昔のキリンビールのビン(「キリンビール」の文字が右から左に書かれている)が置いてありました。

この山頂からの眺めは独特。父島ともまったく趣を異にする、まさに「秘境」です。

ケータ島・大山山頂からの眺望

帰りは別ルートから下山。ブッシュの中をかき分けるように進みます。ガイドのタカコさんは、何度も道を間違えそうになっていました。

30分くらいで、上陸した南浜に到着。少し沖に係留されたマンボウが浜に戻ってくるまでの間、ズボンや靴についた種子をひとつひとつむしりとります。

マンボウからさらにミスパパヤに戻り、コアホウドリの繁殖地を船上から観察。

コアホウドリの繁殖地

写真にたくさん写っているのは、クロアシアホウドリというやつ。コアホウドリは、背中の白いアホウドリで、数的にはずっと少ないよう。たまに飛んでました。
ここでは、持っていった双眼鏡が大活躍。(もっとも、ミスパパヤに双眼鏡が2つ置いてあって、自由に借りることができましたが。)
アホウドリということで、斜面を駆け下りながらテイクオフする様子が見たかったんですが…。それは残念ながら見られず。


そんなこんなで、このツアーのみどころ、すべて終了。
聟島沖を離れ、船は南へと帰途に着きます。ふたたび高速航行開始。
この頃になると日が傾き始めており、吹き付ける風と相まって、どんどん寒くなってきます。
しばらく走って、嫁島沖を通過。さらに南進し、父島列島を目指します。

帰途でも何度か、クジラのブローに遭遇。船のすぐ近くで、ザトウクジラのペアが巨大な背中を見せてくれました。

嫁島と父島の中間あたりで、日没。船を止めて、しばし夕日を眺めます。海に沈む夕日は、地上で見るよりずっと大きく見えました。はからずも、サンセットクルーズまで楽しめました。

この後は、ひたすら暗くなり、寒さは増す一方。僕はずっと上のデッキに出ていたのですが、ウインドブレーカーで覆われている部分はあったかいものの、袖口から吹き込む風で、部分的にやたらと体が冷え出しました。一カ所だけ極端に冷えないよう、体の向きを変え、風が吹き込まないよう気をつけて、なんとか耐えました。
(このツアーに参加する方、ウインドブレーカーは必須です。船にも備え付けのウインドブレーカーが用意されていて、貸してもらえますけどね。)

やがて、南に進む船の左前方に、宵の明星が姿を現しました。
この日はこの後、星を見るツアーの予定。空は雲がはやく流れ、晴れたり雲に覆われたりを繰り返しており、不安な気持ちで空を見ていたのですが、夜になるにしたがって、雲はどんどんなくなり、一面クリアな空へと変化していきました。今夜はすばらしい星空に会えるかも…。期待は高まります。
寒さは正直きつかったですが、空を見たさにずっと上のデッキでがんばりました。

船は、予定を若干すぎ、午後6時10分すぎに港に到着。
朝8時ごろに出発だったので、実に10時間の長旅でした。


このケータ島ツアー、ホエールウォッチングなどに比べると魅力が薄く思われるかもしれませんが、これはほんとにおすすめ。ケータ島に行かずに小笠原から帰ったらもったいない!
長時間航海はけっこうハードですが、それを補ってあまりあるすばらしい体験ができます。

ぜひ!

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://14ch.jp/mt/mt-tb.cgi/595

コメント

いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。

前の記事:« 小笠原最高級ホテル「ホライズン」
次の記事:» 南の島の星の夜

www.flickr.com
This is a Flickr badge showing public photos and videos from 14ch. Make your own badge here.