今クールのテレビドラマ総括(2007夏)
今クールは、ドラマスタート時期に猛烈に忙しかったせいで、初回レビューはまったく書けませんでしたが…総括くらいは、ちゃんと書こうかと。じゃないと、どんなドラマがあったか忘れちゃうからね。
今クール見てたのは、この8本。
・パパとムスメの7日間(日曜9時 TBS)
・ファースト・キス(月曜9時 フジテレビ)
・牛に願いを(火曜10時 フジテレビ)
・ホタルノヒカリ(水曜10時 日本テレビ)
・肩ごしの恋人(木曜10時 TBS)
・山おんな壁おんな(木曜10時 フジテレビ)
・山田太郎ものがたり(金曜10時 TBS)
・受験の神様(土曜9時 日本テレビ)
第8位:受験の神様(土曜9時 日本テレビ)
有名市立中学にあこがれる小学生が、「受験の神様」と呼ばれる天才家庭教師の指導のもと、受験に挑む物語…ですが。
受験という題材を扱い、ストーリーの中に受験に役立つテクニック的なものを織り込むというのは、『ドラゴン桜』の中学受験版的な狙いなんでしょうか。
僕自身も中学受験した身なので、当時を思い起こしながら見ました。
出てくる勉強法とかは、けっこう実際の中学受験を踏まえいるような気がします。たとえば、理科の勉強の場面で、大量のプリントの束を渡されて「これ全部暗記しなさい」なんていうのが出てきてましたが、実際そうです。僕もああいうの、やりました。
ただ、中学受験がちゃんと描かれているということと、ドラマとしておもしろいかということは、やはり別問題ですよね。
主人公の子供たちやその親たちが、受験勉強の過程でのいろんな困難を乗り越えていくエピソードが描かれましたが、それがなにか人間的な深みを感じさせるかというと…べつにそんなことない。あっそ、って感じ。
氷のような心で人と打ち解けることを拒む「受験の神様」の人間的な背景を、もう少し長い時間をとってじっくり描いてくれれば、そこに心引かれるものが生まれたかもしれないんですけどねえ。。
第7位:牛に願いを(火曜10時 フジテレビ)
若者たちの群像劇という意味では、ありがち。でも、その状況設定が「酪農の研修をする農大学生」というところが、ちょっとひねりの加わったところ。
最初は、けっこうおもしろそうかなと思ったんです。
でも、回を重ねてもいっこうに深まっていかない物語に、だんだん退屈してきたというか…。
まずいちばんの不満は、主人公・高清水高志(玉山鉄二)のキャラ。設定が悪いのか、演技のせいなのか、とにかく感情移入がまったくできないんですよね。
酪農家の息子として生まれながら、父に反発し、町に反発し、酪農の道を捨てようとする男…なんですが、なんかただかっこつけてるだけに見えてしまって、苦悩とか葛藤とかが感じられない。
だから、最終回の「父との和解」のシーンにも、なんの感動もありませんでした。というか、「父と子の和解」がこのドラマの大きなテー
マだったんだということ自体、そのシーンまで気づかなかったくらい。
あと、高清水を主人公として1トップ扱いしたせいなのか、他のメンバーのキャラが立っていなかったようにも思います。
いろんな恋愛模様も描かれていましたが、誰が誰を好きなんだかすぐ忘れちゃう。それってきっと、そもそもどうして好きになったのか、背景がちゃんと描かれていないからだと思うのです。だから、「好きなんだ。へー」で終わっちゃうんですね。その恋が成就してほしいとも、べつに思わないし。
酪農の町が抱える社会問題にも触れていましたが、そういう話になるとどうしても比較対象として引き合いに出したくなるのが『北の国から』。あそこで描かれたリアルな状況にくらべると、やはり底の浅さを感じてしまいます。
そんなこんなで、なにやら全部中途半端に終わってしまった感満載のドラマでした。残念。
第6位:ファースト・キス(月曜9時 フジテレビ)
井上真央&伊藤英明というキャスティングを見ただけで、「あー、キャストだけで人気取ろうってだけのドラマだなー」感プンプンだったこのドラマ。
最後まで見て…その印象は、変わりませんでしたね。まったく。
美緒(井上真央)が心臓に爆弾を抱えた重病患者で、最後に成功確率50%の手術を控えていて、残り少ない(かもしれない)人生の時間で、すてきで切ない恋をして…。
っていうのはわかるんですけどね。なんかもう、「これ、絶対死なないでしょ」っていうのがわかっちゃうんですよね、最初から。
だって、最後に死ぬとしたら、「成功確率50%」とかいう設定には絶対にならないじゃないですか。「絶対死ぬ」っていう設定になるでしょ。で、絶対死ぬとわかっていながら愛し合うふたり…みたいな。そのほうが絶対感動的ですもん。
それに、ドラマ全体の雰囲気が明るすぎて、「こりゃ人死には出ねーな」っていうのもありありとわかるし。
というわけで、「どうせ死にもしないのに、悲恋ぶってんじゃねーよ」と、完全にしらけ切った目で、終始見ていたわけですよ。(じゃあ見るなよ!っていわれれば、まあそうなんですが)
ドラマの作りとしても、全般的にこぎれいすぎるというか…。芸達者な阿部サダヲ、竹中直人の味も、いまいち出切っていなかったような。もったいない。
そんなこんなで、“ありがちなゲツク”で終わってしまった感じですかね。
第5位:山田太郎ものがたり(金曜10時 TBS)
王子ブームに乗っかったのかどうかは知りませんが、「すごい王子っぽいけど実は貧乏」という主人公を扱ったこのドラマ。
僕的にはヒットの多い金曜10時TBS枠ですが、今回は…うーん、ハズレかな。
何が不満って…いちばんの理由は、「けっきょく最初と何が変わったの?」感に満ちているから。
成績超優秀・容姿端麗でありながら、家族のことを何よりも大事にするハートフルなあんちゃん・太郎。1クールのドラマで描かれた様々なエピソードを経て、何が変わったか?…なんも変わってないじゃん。
や、まあ、ハートフルなあんちゃんがハートフルじゃなくなっても困るので、そこはそのままで別にいいんですけど。なんていうかなあ。
いろんな苦難を乗り越えて、人間的にひとつ脱皮するとか、そういうなんかがこう、ほしいわけですよ。
ハートフルなあんちゃんというと、やはり思い出されるのは『ひとつ屋根の下』。まああれも、ハートフルなあんちゃんはハートフルなままだったわけですが、兄弟ひとりひとりが葛藤し、さまざまな苦難を乗り越え、脱皮していく様が感動的でした。
対して、ドラマで描かれたエピソードはどれも、太郎のハートフルさを確認するようなものばかり。太郎を揺るがし、苦悩させるようなシチュエーションは、ほとんど皆無。ただひたすら、完成されたハートフルな王子キャラとして存在するのみ。
…これでは、せっかくの演技派・二宮くんがもったいないような。
あと、もうひとつの不満。それは、ヒロイン・池上隆子を演じた多部未華子。えっと、この子って…かわいいの?
なんか、ただ元気いいだけで…どうにも感情移入できませんでした。
まあそんなこんなで、全般的に「上滑りした浅いドラマ」という印象を受けましたとさ。
第4位:パパとムスメの7日間(日曜9時 TBS)
男と女の心と体が入れ替わり…というシチュエーション設定は、すでに使い古されたネタ。
まあよくあるのは、同級生の男女が入れ替わるとかですが、それがパパとムスメになったからといって、それ自体は特に魅力アップに貢献するものではないですわな。
が、結果としては、このドラマはけっこうおもしろかったんです。
どこがおもしろかったかというと…。
ひとつは、全体ストーリーが明確にあって、わかりやすかったこと。
冷えきった関係に合ったパパとムスメが入れ替わり、それぞれの立場を経験することで、互いを理解し合い、成長し…。ありきたりといえばありきたりだし、最初から予想のつく展開といえばそれまでなんですが…予定調和ならではの気持ちよさ、ですかね?
中でもストーリーの核になった、パパの身代わりになったムスメが大企業のおかしなならわしに敢然と異を唱え、周囲の心を動かし、状況を打破していくエピソード。サラリーマンなら、誰でも身につまされる話。でも、会社のいろんなところに疑問を感じつつ、どうすることもできないもどかしい気持ちに、勇気を与えてくれます。
もうひとつのおもしろかったところ。それは、ストーリーを支えるさまざまなエピソードのひとつひとつが、おもしろかったところ。パパとムスメが入れ替わったというシチュエーションを軸にしつつも、そこから展開されるいろんなものごとが秀逸。たとえば、パパを好きになる美人同僚とママとの、冷たいバトルとか。見るものを飽きさせない様々な側面を織り交ぜつつ、でもストーリー全体が散漫になるわけでもなく。そのバランスが絶妙でした。
世界陸上の都合なのか、全7話の短いストーリー構成だったのが残念ではありましたが…。まあ逆に、短かったからこそ、コンパクトでまとまりのいいドラマになったのかもしれませんね。
第3位:肩ごしの恋人(木曜10時 TBS)
主演:米倉涼子・高岡早紀。それだけでもう、グチョグチョのネチョネチョのドロンドロンなやつを想像してしまうわけですが、ぜんぜんそんなんじゃなかったです。甘さよりも苦さが先に立つ抑えめな大人の恋愛を、しっとりかつコミカルに描いた、おしゃれなドラマでした。
まったく性格の違う30過ぎの女ふたりと、たまたま出会った男子高校生、3人の同居生活。失業やら不倫やら離婚やら…。ドラマの性格としては、あきらかに女性向けを意識している感じです。僕、男性ですけど…いいんです、おもしろければ。
このドラマでは、主人公ふたり以外も絡めて、さまざまな恋愛が描かれましたが、それをひとことで表現すると、「『好き』だけじゃどうにもならない恋」ということでしょうか。
主人公・萌が直面するふたつの恋(不倫の恋、高校生との恋)もそうですが、登場するふたりのゲイの、それぞれの恋もそう。
昔の同級生・柿崎祐介にかなわぬ恋心を抱き続けるゲイバーのママ・文ちゃんが最終回にいうこのセリフ、グッときました。
「わかってるもの。祐介が男を好きになるなんて、ありえない。だったらさあ、このままの方がいいじゃない。ときどき来てくれて、なんかあったら愚痴ったりして」
「そうやって、一緒に歳をとっていくのも悪くない、か」
「そういうこと」
結局このドラマ、終わってみると、どの恋もひとつとして成就していません。すべて、ほろ苦さを残したまま消滅。それでいながら、このドラマはハッピーエンド。結ばれればハッピー、結ばれなければアンハッピーという単純な構図とはひと味違う、味わいのあるハッピーエンドです。
こんな恋もすてき。これが大人の恋。
そうそう、竹内まりやの歌う主題歌『チャンスの前髪』が、ドラマにすごく合っていてよかったですね。
第2位:山おんな壁おんな(木曜10時 フジテレビ)
「おっぱいの大きさ」にここまで堂々とフォーカスしたドラマというのも、よく考えるとすごい話で。
1クール終わってみて、「このドラマ、結局なんだったんだろう?」と思い返してみると…ほんと、なんも中身ないです。はっきりいって。毎回毎回、ただすったもんだして、特に大きなストーリーが展開するわけでもなく。
展開らしい展開といったら、最後の最後、主人公・青柳(伊藤美咲)に3人の男がプロポーズし、幼馴染の井口(西島秀俊)と婚約することくらい。それも、井口との愛が徐々に深まるとかいった伏線は、ほぼ皆無。
…なんですが。
これだけ中身ゼロなのに、終始飽きずに楽しく見られたっていうのが、ある意味すごいなと思うんです。
その理由は…細部にいたるまで徹底したコミカルさゆえ、ですかね。
とにかく、登場人物ひとりひとりのキャラが立ってる。主人公ふたり・青柳&毬谷(深田恭子)はもちろん、井口、奥園専務(及川光博)、葛沼さん(温水洋一)、その他サブキャラにいたるまで、ひとりとしていい加減なキャラ設定がない。
その個性的なキャラが細かくギャグを連発し続ける長編コント?それがこのドラマの本質のような気が。
だから、ストーリーがどうのこうのじゃなく、その場その場を気楽に楽しむのが、このドラマの見方なんだろうと思います。そういう意味で、このドラマはよくできていたのではないかと。
公式サイトを見ると、「脚本協力」として、『SMAP×SMAP』の放送作家・鈴木おさむ氏が参加しているとのこと。そのお力ゆえ、ですかね…?
第1位:ホタルノヒカリ(水曜10時 日本テレビ)
『anego』『ハケンの品格』に続く、はたらく女子のリアル・ストーリー第3弾!
…というふれこみらしいですが、それはどうでもよくて。
単純に、「不器用だけど一生懸命な女の子の物語」として、おもしろかったんではないかなと。
職場ではちゃんとていても、家ではジャージ・ちょんまげ姿で縁側に寝そべるダメダメキャラ「干物女」。
それを「かわいい」と思わせられてしまうのは、ひとえに演じているのが綾瀬はるかだから…というのもあるんでしょうが、僕、べつに綾瀬はるか好きじゃないので、それだけでもないだろうなと。
かわいさの源は、やはり主人公・蛍と、一緒に暮らす「ぶちょお」との、無邪気なじゃれ合い、ですかね。いいなあ、こういう自然な関係…と思わせられる魅力に満ちておりました。
蛍がぶちょおに「はー?はー?」と食ってかかるのとか。すてきすてき。
すてきといえば「すてき女子」というキーワードも、心に引っかかるものがありました。「干物女」の対極キャラという位置づけなのかなんなのか、定義はどうでもいいんですが「すてき女子」という言葉の響きに惹かれます。あんまり惹かれたんで、同じ職場のすてきなママさんを勝手に「すてきママ」と呼んでます。
ちなみに、僕の休日の過ごし方は、完全に「干物男」状態ですね。
まあ、縁側で寝そべってポテトチップはないですが。
…ということで。
ちなみに、世間的には「花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~」が、今期最高のヒットだったそうですね…。僕は初回の途中でうんざりして、以後見なかったんですが。うーん。よくわからん。
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