今クールのテレビドラマ総括(2007冬)
はい、いつものドラマ総括。
今クールは、途中で見るのをやめてしまったドラマがたくさんあったので、対象ドラマはやや少なめ。
・華麗なる一族(日曜9時 TBS)
・東京タワー オカンとボクと、時々、オトン(月曜9時 フジテレビ)
・ハケンの品格(水曜10時 日本テレビ)
・拝啓、父上様(木曜10時 フジテレビ)
・花より男子2(リターンズ)(金曜10時 TBS)
・ハゲタカ(土曜9時 NHK)
以上6本。
第6位:華麗なる一族(日曜9時 TBS)
今クール一番の話題作…のはずでしたが、最下位とさせていただきました。
(といっても、もっとつまらなくて見るのをやめてしまったドラマがいっぱいあったので、それらと比べてひどかったわけではありませんが)
なにが良くなかったか…。キムタクが演じる主人公・鉄平の正義漢っぷりが鼻につく、というところでしょうか。
鉄平は、一点の曇りもない信念で行動する正義の男。それがかえって感情移入を妨げていたような気がします。
聞くところによると、原作の主人公は鉄平ではなく、彼と争う父・大介だそうな。
大介は、自分が率いる阪神銀行を守るために策謀を巡らす男。そして、鉄平が本当の自分の息子ではなく、父・敬介が妻に生ませた不義の子であると信じ、苦悩する男。
その人間臭さこそが、彼をこのストーリーの主人公たらしめる条件だったのではないかと思います。
同じく山崎豊子原作の『白い巨塔』における財前教授にも通じるところがあります。
そういう人間臭さを持たない鉄平を主人公にしてしまったところに、このドラマの最大のマイナスポイントだったのではないかと思います。
まああと、あれですね。
・金の鯉(=将軍)
・イノシシ
↑やつらの素敵な動きっぷりに、すっかり興ざめした方も多いのでは。
第5位:ハケンの品格(水曜10時 日本テレビ)
や、これもそんなに悪くなかったんです。むしろ面白かった。
ただ、最後まで見たやつの中で順位をつけると、こういう順位になってしまったんです。
このドラマ、第1回を見た後の感想は「リアリティないなあ」というところだったのですが、それはまあ、見ているうちに気にならなくなりました。こういう世界観だと割り切れば、これはこれでアリ。篠原涼子演じる大前春子の口ぐせ「〜ですが、何か?」も、だんだん気持ちよくなりました。
小泉孝太郎、大泉洋という、普通では考えられない地味な男優キャスティングも、非常に功を奏していたのではないかと思います。
ラストで、大泉洋のところに再び篠原涼子がスーパー派遣として着任するところが描かれました。
この感じだと、スペシャルドラマか何かで続編がありそうですね。
第4位 拝啓、父上様(木曜10時 フジテレビ)
「なんか古くさそうだなあ」というのが当初の印象だったのですが、これが意外にも面白かったです。
何がどう面白かったといわれるとよくわかりません。しいていうなら、ドラマ全体に流れる空気、でしょうか。
特にショッキングな事件が発生するわけでもなく、小さな出来事の積み重ねで淡々とドラマは進みます。登場人物も、大げさなアクションや台詞でこれ見よがしにドラマを盛り上げるようなことはありません。それでも、なぜか見ていて楽しいんですよね。
これも、巨匠・倉本聰だからこそなせる業、ということなのでしょうか。
前作『優しい時間』に続き、嵐の二宮和也くんが主演。すっかり倉本聰のお気に入りですね。このドラマの微妙な味わいは、彼の醸し出す雰囲気によるところも大きかったように思います。
あと、関ジャニ∞の横山裕くんの存在も重要だったように思います。アイドルとは思えない役どころでしたが、彼ならではの味がうまく生きていて、とってもよかったです。
というわけで、前作『優しい時間』で、僕の中での評価がちょっと下がっていた倉本さんですが、今作で一気にまた倉本さんへの期待が高まりました。次作も楽しみです。
第3位 東京タワー オカンとボクと、時々、オトン(月曜9時 フジテレビ)
1位でもいいくらいだったんですが、秀作ぞろいの今クールではこの順位となりました。
当初は、かっこよすぎる「ボク」ことマーくんと、しっかり者イメージの強すぎる「オカン」のキャスティングに、「これはいかがなものかなあ」と首をひねったものでした。
が、結果としては、このキャスティングは全然問題なかったようです。
むしろ今となっては、昨年秋にスペシャルドラマとして放送された際の、大泉洋+田中裕子のキャスティングよりしっくりきています。(まあ、1クール見続けて見慣れてしまったせいもあるでしょうが)
このドラマでよかったなあと思うのは、マーくんをいつまでも子供のように思いおせっかいを焼いてしまう「オカン」の母親心。
たとえば、病院食で出てきたヨーグルトをとっておいて、「マーくん、ヨーグルト食べんしゃい」なんて言ってみたり。
「そういえば、うちの母親もよくこういうことするよなあ」なんていうふうに、自分と母とのつながりとつい重ね合わせてしまい、感慨深いものがありました。(あ、母親、まだ生きてますよ)
ちょっと残念だったのは、最終回でオカンが死んでしまったとき、あまり泣けなかったこと。ものすっごい泣けるんじゃないかと期待していたので、すこし肩すかしを食った感じです。
まあでも、泣かせよう泣かせようと変に演出されすぎるより、穏やかな表現でよかったのかもしれません。
ラスト、マーくんがオカンの写真と一緒に東京タワーの展望台に上り、東京の景色を見せるシーン。大げさなことを言うでもなく、「すごかね〜」とのんびり話しかけるあたりが、オカンとマーくんの関係を集約しているようでよかったと思います。
ということで、前クールに引き続き、個人的にはめずらしくゲツクでいい作品が続いたように思いますが、皆さんの評価はいかが?
第2位:ハゲタカ(土曜9時 NHK)
民放の連ドラと違って全6話の短い構成ですが、これは面白かったです。
「腐った日本を買い叩く」と豪語し、アメリカの投資ファンド・ホライズンインベストメントから乗り込んできた敏腕ファンドマネージャー・鷲津雅彦と、彼を迎え撃つ銀行マン・芝野健夫。彼らを中心に繰り広げられる、金融ビジネスの戦いを描いたのがこのドラマ。いままであまり見たことのない、我々にはあまり馴染みのない題材ですが、ついつい引き込まれました。
このドラマの魅力のひとつは、さまざまな金融手法を駆使して繰り広げられる戦いのリアリズム。
まず、描かれる状況設定が、実際の日本のビジネス界とオーバーラップするようなリアルさです。零細企業の不良債権、カリスマ経営の行き詰まり、IT長者の失脚…。ああ、ありそうありそう、という感じです。
そして、その状況の中で、鷲津・芝野らが繰り出すさまざまな金融手法に、「ほおぉ、こんな手があるのか」と興味をそそられることしきりでした。
もうひとつの魅力は、鷲津と芝野という二人のキャラクターの個性。
「金を稼いで何が悪い。日本は資本主義社会だろう」と開き直る鷲津。人の心を大事にし、金融マンとして自分に何ができるかと悩む芝野。
悪人っぽく見える鷲津もけっして単なる悪人なわけではなく、彼なりの行動原理があり、苦悩もある、人間臭いキャラクター。だからこそ魅力的な主人公たり得るのだと思います。
鷲津政彦を演じたのは、大森南朋。これまでにもいろんな作品に出演し、僕もわりと好きな俳優さんのひとりです。が、ここへ来ていきなり主役への抜擢、そしてこの強烈な存在感。ドラマ界に驚きを持って迎えられたのではないでしょうか。これから一気に主役級俳優として大活躍してくれることを期待してやみません。
最終回、地位を失った鷲津と正義を貫く術を断たれた芝野とが手を組み、日本の産業を守るために“ハゲタカ”ホライズンを出し抜くという展開に、胸が熱くなりました。
たった6回で終わってしまったというのが、残念でなりません。もっと見たかったです。
第1位:花より男子2(リターンズ)(金曜10時 TBS)
期待通り、余裕の安定感で第1位。
前作もとても面白かったですが、今作はそれよりさらに面白かったです。
どうして前より良かったのか?と自分なりに考えてみると…。
ひとりひとりの強烈な魅力を持った登場人物がたくさんいたからかなあ?と思います。
・牧野つくし(井上真央)
・道明寺司(松本潤)
・花沢類(小栗旬)
は当然ですが、今作では
・西門総二郎(松田翔太)
・西田(デビッド伊東)
の魅力アップしてました。
しかしなんといっても魅力的だったのは、
・大河原滋(加藤夏希)
です。
加藤夏希自体はべつに好きでもなんでもないんですが、彼女が今作で演じた大河原滋というキャラクターは猛烈に良かったです。
つくしの恋敵でありながら、明るくてものすごくいいやつ。でもその明るさの裏には、道明寺の心をつかめないさびしさを隠してる…そんなキャラクター。まさに適役だったと思います。
つくしのために道明寺から身を引き、空港でつくしと別れるシーン(エスカレーターでVサイン)では、涙ボロボロ流して泣きました。
最終回、ついに母親の許しを得てつくしと結ばれた道明寺…ということで、いよいよ本当に終わりなんでしょうかねえ?
こんなに魅力的なキャラクターたちをもう見られなくなるなんて残念。いつまでも続きを見たい。…そんなふうに思わせられる、素敵なドラマでした。
ということで、いちおう順位をつけてはみましたが、正直なところ、今クールは面白いドラマが多かったです。(見るのをやめてしまったやつはどうだったか知りませんが)
次クールは…どうなんでしょ。あんまり期待できない印象を受けるのは僕だけでしょうか…?
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