ギャルサー(土曜9時 日本テレビ)
アリゾナの大自然の中でインディアンと共に育ったカウボーイ男が、ギャルの聖地=渋谷に降り立ち、ギャルたちに説教する物語。
なんかつまんなそう、と思ったんですよね。正直。
渋谷ギャルの文化なんて興味ないし、それにオヤジが説教するっていうのもなんだか…。
その認識は、実際にドラマを見て、改めさせられることになったわけですが。
カウボーイ男・シンノスケ役には、藤木直人。あんまり好きじゃないんで、ちょっとうんざりしていたんですが、今回の役は彼にはまっている気がします。彼、いつもクールで頭いい感じの好青年役ばかりでしたが、今回はかなり変なやつ。その変なやつを、クールで頭いい感じの藤木直人が演じるというミスマッチ感が、なんとも面白いです。
ヒロイン(?)・サキ役に戸田恵梨香。『エンジン』『野ブタ。をプロデュース』など、最近出番が増えてる彼女ですが、ついにヒロインですかー。多分、連ドラでのヒロイン抜擢は初だと思うんですが、ぜんぜん違和感ないです。こちらもうまくはまってます。
その他、シンノスケと親交を深める“おまわり”役に佐藤隆太。謎のインディアン・ジェロニモ役に古田新太。古風な喫茶店を守り続けるマスター役に生瀬勝久。安定感のあるキャスティングで脇を固めています。渋谷ギャルたちの“危うさ”と、うまくバランスがとれているのではないかと。
まずこのドラマを面白くしているのは、シンノスケの行動のこっけいさ。
食事を調達するために渋谷の真ん中で獣を捕る罠を仕掛けたり、投げ縄を振り回したり。あまりにありえなさすぎて、逆にシンプルに笑えます。ことあるごとに「Shit!」と吐き捨てるのも、なにげに可笑しいです。
行動のこっけいさという意味では、ジェロニモもいいです。ジェロニモ、インディアンのくせにオレオレ詐欺やメイドコスプレに詳しかったりして、実におもしろいキャラです。お気に入り。
ちなみに、公式サイトによると、彼の正式な役名は「ジェロニモⅢ世」というらしいです。「Ⅲ世」って…。ドラマに直接出てこない、こんなところでも笑わせてくれます。ステキです。
こうした“こっけいさ”がこのドラマの表の魅力だとすると、裏の魅力は、シンノスケの口から発せられる言葉の重みではないでしょうか。
「お前たちはすぐ『うざい』『死ね』という。なぜだ?」
「言う方も言われた方も本気にしない?なぜわかる?」
彼が発する「なぜ?」のひとつひとつで、僕らが当たり前だと思っていることが実はものすごくねじ曲がっているんじゃないかと、自分の中で問い直させられるわけです。
しかもそれは、渋谷ギャルに代表されるいまどきの若者だけでなく、いい大人の僕らにも同様に突きつけられている疑問であるように思います。
だからこそ、見ていて心に感じるものがあるのです。
また、冒頭で「ギャルたちに説教」と書きましたが、ギャル(もしくはそれに代表される若者たち)のあり様を否定しているかというと、そんなことはないんですよね。
むしろ逆に、あたたかいまなざしで見守っているように思えます。
学校で落ちこぼれ、家庭からはじき出され、居場所を失い、さまよった挙句に渋谷にたどり着いたギャルたち。社会のはみ出し者になりつつある彼らが、さまざまなぶつかり合いを経て、人として大事なものを取り戻していく。
「学校でいい成績を取り、いい会社に就職することが正しいんじゃない。はみ出し者の世界でも、本当の正しさを取り戻すことができる」
そう訴えかけてきているように思えてなりません。
そんなわけで、ただのくだらないギャグドラマかと思っていたこのドラマ、実はけっこういい作品なんじゃないかと思っています。(まあ、最後まで見ないとわからんですが。)
上っ面で判断してパスを決め込まないで、試しに見てみてほしい、そんなドラマです。
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